床屋さん
最近巷で少なくなったものの中に、床屋さんがあげられるのでは。
床屋さんの前を通った時の、あの香りを嗅ぐ機会がぐんと減っている気がします。
私にとってあの香りは、母の香りです。母は理容師をしていました。
口を閉じていることなんてなかった陽気な父とは違い、寡黙で細やかで何の仕事も丁寧に仕上げる母でした。綺麗好きで時間が出来ると鏡と窓ガラスを磨いていました。ノビている姿は、どう頑張っても思い出せません。
同性のワタシには特に厳しく接するし、自分の仕事場に入られるのを嫌っていました。母にとってあそこだけは聖地だったのかもしれないと、今ならわかる気がします。
ムスメに大甘の父と違い、母はけむたい存在でした。
若い時には父似と皆に言われ育ちましたが、最近は
自分の発する言葉に母の台詞が浮かび、鏡に映る姿に母をみつけて驚く・・・。
そんな事が多くなってきました。
自分の娘になにを伝えたかったのか。どう生きよと伝えようとしたのか。
いろいろ私の心に残っている言葉はあるのですが、今にして思うとそんな背中を見せられたことが全てだった気がしています。
もちろん進んだ道は違っているけれど、母の背中を思い出す度に追いつけないなと強さと偉大さに脱帽デス。
少なくなったBARBERの看板をみると嬉しくて、目を閉じて嗅覚を研ぎ澄ましています。